2021年6月30日

山口左仲博士の論文原図展示の更新



 目黒寄生虫館では、日本の寄生虫分類学の大家である山口左仲博士が残した論文や図版の原稿などの資料を多数保管し、一部を2階展示室で順次公開しています。
 6月27日の閉館後に「山口左仲博士が論文に使った原図」の展示更新を行いました。今回の展示は、1930年代に描かれた鳥類・哺乳類・爬虫類に寄生する吸虫の原図です。また、牛の第一胃に寄生する吸虫Fischoederius elongatusの実物標本も展示しています。山口博士が遺した精細な原図を是非ご覧ください。【巖城】

2021年6月24日

ミニ特別展「生体展示 ロイコクロリジウムの幼虫」開催(6/24)のお知らせ

 6月24日から、ロイコクロリジウム(Leucochloridium属の吸虫)の幼虫の生体展示を始めました。これは沖縄県・久米島で採集された巻貝のオカモノアラガイに寄生していたものです。
 ロイコクロリジウムの幼虫はオカモノアラガイの触角内で活発に動き、鳥に見つけられやすくするという生態で知られています。幼虫が発育すると宿主の貝に負担がかかるようで、あまり長期間飼育することができません。
 この機会に、幼虫が実際に動く様子を、是非ご自分の目でお確かめください。ポスターで最新の知見も紹介しています。【巖城】

2021年6月2日

芽殖孤虫のゲノム研究が論文になりました

 この研究は、私(倉持)が前職(国立科学博物館)中に宮崎大学、東京慈恵会医科大学ほかとの共同で行ったもので、国際学術誌Communications Biologyオンライン版で公開されました。芽殖孤虫とはヒトに芽殖孤虫症を引き起こす珍しいサナダムシの仲間です。世界での症例数はわずか18例、そのほとんどが死亡例で、特に奇妙なのは成虫が見つかっていないこと、幼虫が無秩序な出芽によって増えること、寄生は皮下をはじめ全身におよぶこと、さらに日本での症例がやや多いことです。研究には、1981年にベネズエラの症例から得られた虫を、マウスの腹腔内で生きたまま維持したものを用い、次世代シーケンサーと最先端のバイオインフォーマティックスを駆使しました。

詳しい内容はこちら
https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/634985.pdf

論文へのアクセスはこちら
https://www.nature.com/articles/s42003-021-02160-8

 芽殖孤虫は目黒寄生虫館で見られます。国立科学博物館の特別展「大地のハンター展」(6月13日まで。要予約)でも展示しています。【倉持】

芽殖孤虫:目黒寄生虫館の展示標本

芽殖孤虫:目黒寄生虫館の展示標本