2026年10月12日

理科ハウス LiCa・HOUSeを訪ねました

 理科ハウスは、神奈川県逗子市にある自称「世界一小さな科学館」。それでも館内には、五感による体験を目指した展示物と実験装置があふれ、貸し出しもしてくれる図書室を備えます。加えてサイエンスレクチャーに特別企画展などのイベントも。スタッフは館長さんと学芸員さんお一人のみで、来館者には必ず声をかけ、ともに体験し会話を楽しみます。これほどに素敵な理科ハウスですが、来年5月16日を以て閉館すると伺い、急遽9月28日に訪ねました。理科ハウスとは、2021年11月にオンラインイベントでご一緒して以来の再会です。
 加えて理科ハウスは、当館とは何かと縁がある(一社)路上博物館が行う「サイレント閉館調査プロジェクト」に大きく関わっています。サイレント閉館とは、博物館等が「誰にも知られずにひっそりと閉館する」こと。コレクションや知恵や記録の蓄積が失われていくことを意味します。そこで、路上博物館は「理科ハウスと目指す楽しい閉館の大実験」を開始。閉館までの1年間にやるべきこと、できることをワークショップ形式でまとめ、理科ハウスの閉館を通して新しい「閉館モデルづくり」を目指します。当館でも、理科ハウスの閉館を惜しむだけでなく、その思想や辿った道のりを次世代に語り継ぐ何かを探っていきたいと考えます。【倉持】
Uploaded Image

2026年10月8日

草垣群島で生物調査

  9月27~29日にかけ鹿児島大学水産学部の練習船 南星丸にお世話になり、28日に草垣群島の上ノ島という無人島で調査を行いました。台風の影響がありましたが、幸い1日はしっかり時間を取ることができました。草垣群島は鹿児島県の南西約80 kmに位置し、他の有人島とはどことも離れておりアクセスが難しい島の一つです。貴重な機会でしたので、海の貝類に加え陸貝(カタツムリ)、植物の研究者も参加しました。
 衛星写真では平らに見えましたが、実際には切り立った崖のような地形で、上陸地点は限られました。ボートで近づき、最後は泳いで島に渡ります。灯台とそこへ延びる簡易な道があるものの、人の手がほとんど入っておらず、海産貝類はどの種も普段見るより大きく育っている印象でした。共同研究に必要な共生性の貝も得られ、大変充実した調査となりました。今後、本調査で得られた貝類をまとめ、報告する予定です。【高野】

2026年10月4日

台湾からお客様

 去る9月27日、ハナビルを研究する賴亦德 (ライ・イー・テー)博士がお友達とともに来館されました。見学と台湾産のハナビル Dinobdella ferox の標本をご寄贈いただくためのご来館でした。ハナビルは環形(かんけい)動物門、ヒル綱、顎(あご)ヒル目、ヒルド科に属し、幼生期はヒトを含む大型哺乳類の鼻腔内で寄生生活を送り、成虫になると宿主を離れて自由生活に入ります。幼生は宿主の血液を吸って成長し、成虫は水生昆虫やイトミミズなどを捕食します。日本にも見られますが非常に珍しく、10例ほどのヒトの症例が報告されているようです。これまで当館はハナビルの標本を所蔵していなかったため、たいへん貴重な標本をいただいたことになります。【倉持】

Uploaded Image

2026年10月3日

新青丸KH-26-15次航海に参加

写真1.マルチプルコアラー

写真2.底引き網で得られた生物

写真3.シダムシの一種

 9月13日から26日まで、海洋研究開発機構の東北海洋生態系調査研究船 新青丸による釧路沖(水深1200~4500 m)の調査に参加しました。沿岸のブルーカーボン(アマモやコンブなどの海草・海藻)が深海にどの程度流入・貯留されているかを調べるのが目的の航海で、底引き網やマルチプルコアラ―(写真1)という測器を用い、生物や泥を採取しました。
 ヒトデやナマコといった棘皮動物が多く得られ(写真2)、様々な寄生虫も見つかりました。写真3は、ニチリンヒトデに内部寄生していたシダムシの一種です。枝分かれした奇妙な姿をしていますが、これでもエビやカニに近い、甲殻類の一員です。【高野】

2026年9月28日

ドイツ・ロストック大学のハリー・パーム博士が来館されました


Palm博士と小川名誉館長、長澤博士
 

  9月15〜20日に、ドイツ・ロストック大学のハリー・パーム博士(Dr. Harry W. Palm)が来館されました。パーム博士は四吻目(Trypanorhyncha)の条虫類の研究の第一人者で、20年前と17年前にも当館所蔵標本の観察のため来訪されており、今回が3度目の来館です。

 四吻目条虫の専門家は日本にはほとんどおらず、日本周辺のこの条虫類の状況はほぼ知られていません。その解明がパーム博士の20年前からの目的です。そのために、多種多様な魚類の寄生虫標本の蓄積である山口左仲博士標本コレクションは大変重要です。
 パーム博士は事前に準備した400枚以上の標本について次々と観察と種同定を行い、ノートPCの論文原稿に同定結果や標本データをすぐに書き込むという、その手際の良さは見事なものでした。それらの観察を終えると、標本庫で未登録標本から四吻目と思われるものを選び出し、更に50枚以上の標本を観察しました。古い標本のラベルやカードの多くは日本語の手書きなので、それを読んで訳すという作業で私もお手伝いしました。
 9月19日には小川和夫名誉館長と、元・広島大学教授の長澤和也博士がパーム博士に会うため来館されました。お二人は魚類寄生虫の専門家です。長澤博士はパーム博士が学生の頃からのお知り合いで、今回は20年ぶりの対面でした。小川名誉館長の条虫標本を観察しながら、四吻目の種同定のポイントを教わりました。
 当館の標本が関わった論文は近いうちに投稿される予定です。また、パーム博士は数年内に四吻目条虫の全種を載せた本を書くつもりということなので、これも大変楽しみです。【巖城】