「カツオの生食を原因とするアニサキス食中毒の発生要因の調査と予防策の確立のための研究について」(厚生労働科学特別研究)(研究情報 2019/11/07)


 昨年(2018年)、カツオの生食によるアニサキス食中毒が大きな問題になりました。このような食中毒を防ぐためには、発生要因の解明や、予防策の検討が必要です。
 当館では昨年度、標題の厚生労働科学特別研究事業による調査を、東京都健康安全研究センターおよび国立感染症研究所と共同で実施し、次のようなことがわかりました。
当館が検査をしたのは昨年5月~11月に漁獲されたカツオ55尾で、そのうち8尾(14.5%)の筋肉に平均4.8虫体のアニサキスを検出しました。釣り上げられた時にすでに筋肉に寄生していました。カツオの内臓にも多く寄生していましたが、港に水揚げされ、消費地に輸送される間に、内臓から筋肉にアニサキスが移動することはありませんでした。また、アニサキスは筋肉では腹側だけにみられ、背側からは検出されませんでした。筋肉に寄生していた種類はアニサキス・シンプレックス(アニサキス食中毒の主な原因種、Anisakis simplex)で、カツオ1尾あたりの寄生数(内臓・筋肉合計)は2012~2016年に比べ、昨年5月は7倍、8~11月は4倍でした。以上から、昨年のカツオの筋肉にはアニサキスが例年より多数寄生し、食中毒増加の要因になったと推測されました。
 2017年9月以降の黒潮の大蛇行により、カツオが例年とは異なる回遊経路を取ったことが、アニサキスの寄生状況に影響を与えた可能性が考えられています。なお、昨年6月以降にカツオによるアニサキス食中毒の報告数が減少しましたが、カツオの取扱いが慎重になり、目視確認や冷凍などの対策が行われたことが要因と推測されました。

【小川和夫、巖城 隆、髙野剛史】

カツオの内臓に寄生するアニサキス幼虫


ミンチ状にした身に下から光を当て、アニサキス幼虫を検出