2025年4月13日

情報コーナーで「日本の寄生虫症と寄生虫性食中毒の発生状況」展示を開始

 4月11日から情報コーナーで「日本の寄生虫症と寄生虫性食中毒の発生状況」の展示を始めました。
 日本では、かつて見られた回虫・鉤虫・蟯虫などによる寄生虫症はほとんど無くなった一方、新鮮な魚・肉や、汚染された水から感染する寄生虫症や食中毒、海外との交流の増加で感染機会が増えた寄生虫症が問題となり、死者も発生しています。
 新設の展示では、厚生労働省の統計データに基づく、最近10〜20年間の寄生虫症(四類・五類感染症)と寄生虫性食中毒の発生状況をグラフで見られます。今まで展示の無かった、クリプトスポリジウムやジアルジア(ランブル鞭毛虫)などの写真や解説もあります。
 特別展などの開催時は、一時的にそれらの内容に入れ替えることがあります。あらかじめご了承ください。【巖城】

2025年4月9日

久米清治博士を顕彰する楯をご寄贈いただきました

 故 久米清治博士(1915〜2008年)は、東京農工大学農学部獣医学科の教授を務められ、在任中の1948〜1978年に犬糸状虫の生活史を明らかにして、本症予防の道を開いた方です。去る4月2日、久米先生のご子息の久米邦興さんがご来館になり、1972年にアメリカ合衆国犬糸状虫学会から贈られた盾をご寄贈いただきました。今後、常設展示できるよう準備を進めます。このご寄贈は、中垣和英博士(私、倉持が農工大の学生だった時の先生)のご尽力により実現しました。【倉持】

2025年4月2日

日本寄生虫学会第94回大会に参加しました

 この大会は、大会長:大阪大学微生物病研究所の岩永史朗教授のもと、去る3月18、19日に大阪大学コンベンションホールで開催されました。当館から、髙野、佐田両研究員と私(倉持)が参加し、以下のタイトルで研究発表しました。

佐々木・巖城・倉持ほか:2023年および2024年に関東にて発見されたLeucochloridium属吸虫
髙野・倉持ほか:北西北太平洋の超深海性クサウオ科魚類から得られた吸虫の形態と系統的位置
倉持・髙野:皇居東御苑天神濠で捕獲されたナマズの胃から得られた自由生活性ヒル類、シマイシビルErpobdella japonicaについて

 ほかにもシンポジウムが2つ、評議員会・総会をはじめ各種委員会が開かれ、大会前日の3月17日には寄生虫分類形態談話会を主催し、さらに生態学・疫学談話会に出席するなど大忙しの3日間でした。【倉持】

2025年3月7日

北海道大学のサンアルン・カニアチップさんが来館されました

 3月5日に、北海道大学大学院獣医学研究科の大学院生 サンアルン・カニアチップさん(Ms. Kanyatip Sangarun)が研修の一環で来館されました。彼女はタイからの留学生で、現在の研究テーマは北海道のエキノコックスの分子疫学です。展示室では、家畜の寄生虫やエキノコックス(多包条虫・単包条虫)の展示だけでなく、多包条虫の中間宿主のエゾヤチネズミから採集された猫条虫の一種(ヒダティゲラ・カミヤイ)にも注目していました。また、現在開催中の「世界顧みられない熱帯病の日 特別写真展」も熱心に見入っていました。
 なお、いつもは彼女はプロイ(Ploy、意味は宝石)さんと呼ばれていますが、タイでは本名は長過ぎて覚えられないため、家族や友人の間ではニックネームで呼ぶ習慣があるのだそうです。【巖城】

2025年3月6日

日本展示学会:2024年度展示学講座に参加しました

 この講座は去る2月22・23日、日本各地で展示に携わる職員など40名ほどを集めて、東京国立博物館の黒田記念館(東京都台東区)で開催されました。今回のテーマは「展示のリノベーションを考える」でした。このリノベーションという言葉には、展示のリニューアル(改修)とどまることなく、社会的な要求の変化や、来館される皆様のニーズの拡大と多様化に広く応えるために博物館は生まれ変わる、という意図が込められています。2日間のプログラムは、リノベーションの現在とこれから、リノベーションに向けた展示評価の方法に関する講義、ワークショップ(写真参照)、リノベーションの事例報告などからなりました。多様で高度なデジタル化によりリノベーションを達成した報告の一方で、解説パネルを「手書き」にしたことで来館者が急に増えた事例などは大きな話題となりました。【倉持】

2025年2月15日

ラオスからのお客様をお迎えしました

 2月11日、パスツール研究所ラオスのPalita Hansana博士と、マラリア学、寄生虫学、昆虫学センターのSouphaphone Souvannaphasy博士(いずれもラオス保健省の研究機関)がご来館になりました。お二人は現在、国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)で研修中で、同研究所熱帯医学・マラリア研究部の石上盛敏 熱帯医学研究室長のエスコートで見学にお越しになりました。本国では、マラリアやメコン住血吸虫症の制圧に国際保健機関(WHO)と共に取り組んでいらっしゃいます。日本がいくつかの寄生虫症を克服した方法などに興味を示され、ラオスにも寄生虫の標本を管理する施設を作りたいと話していらっしゃいました。【倉持】

2025年1月29日

DNDi幹部の皆さんがご来館になりました

 特別写真展 「顧みられない熱帯病と暮らす人びと」が開幕した1月24日午後、同展を共催しているDNDi(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)幹部の皆さんに写真展をご覧頂きました。DNDiの皆さんは、当館での展示に大きな期待を寄せているとのこと。ロンドンからお越しのエリック・ストバーツ先生から、亀谷 了先生が目黒寄生虫館を創設したいきさつや、ご来館なる方々の年齢層などについてご質問をいただきました。また、「はらのむし通信第204号」にご寄稿いただいた平林史子先生もお越しになりました。平林先生は昨年12月、熱帯医学における業績が高く評価され、2024年度日本熱帯医学会女性賞を受賞されました。平林先生、おめでとうございます。【倉持】

DNDi(英語)
https://dndi.org

DNDi Japan
https://dndijapan.org

2025年1月24日

世界顧みられない熱帯病の日(1月30日) 特別写真展 「顧みられない熱帯病と暮らす人びと」が開幕しました

 来る1月30日は、WHO(国際保健機関)が定めるWorld NTD Day(世界顧みられない熱帯病の日)です。写真展のご紹介は下記リンクでご覧いただけます。下の写真は、開幕前日の閉館後に行われたデザインチームによる展示設営の様子です。ドキュメンタリー写真と映像からなる展示は、これまでの特別展にはない味わいに仕上がり、現地の様子が生々しく伝わってきます。昨年暮れに発刊した「はらのむし通信 第204号」では、この「顧みられない熱帯病」を特集しており、写真展と合わせてご覧頂くとより理解が深まり実感がわいてきます。これらの病気と共に生き、闘う人々に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。ご来館をお待ちしております。【倉持】

写真展のご案内
https://www.kiseichu.org/single-post/20250122

「はらのむし通信 第204号」のご案内
https://www.kiseichu.org/publication

2025年1月18日

「仁吉3D」7作品を新たに公開しました

 当館では、沼田仁吉(1884〜1971年)作製による寄生虫卵8種と衛生害虫3種の拡大蝋模型を3Dデータ化し、「仁吉3D」と称して公開してきました。この度はその第2弾で、新たに寄生虫卵7種が加わりました。さらに今年度は一歩進めて、寄生虫卵12種について3Dプリンターによるレプリカ作成を行いました。倍率はすべて1000倍ですから、卵の大きさの違いが良くわかります。透明の樹脂を使ったことで、寄生虫卵の実感がよく表現できました。

    MPM-463 ほか7点 寄生虫卵ワックスモデル
    https://sketchfab.com/3d-models/mpm-463-7-parasite-egg-wax-models-e31561abdc124dd1b250532538936aaa

    仁吉3D
    https://www.kiseichu.org/jinkichi3d

 昨年の11月には「レプリカの利用」を試みました。東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)医学部、寄生虫学・熱帯医学分野の石野智子教授ほか先生方のご厚意により、当館の巖城、髙野、私 倉持がレプリカを携えて医動物学実習に参加させていただきました。実習では医学科と保健衛生学科の学生さんたちが、寄生虫卵の標本や組織切片などを顕微鏡観察しスケッチしますが、立体的で手に取ることができるレプリカにたいへん興味を持っていただきました。今回の試みはまずまず成功といったところでしょうか。今回のこの一連の事業は、一般財団法人全国科学博物館振興財団による、2024年度全国科学博物館活動等助成事業の助成を受けて行われました。
 この先も様々な利用を考え、試していきます。なお、沼田の作品が館外に出たのはこれが初めてです。【倉持】

2025年1月16日

めぐろキッズレポーターの取材を受けました

 1月11日に、めぐろキッズレポーターの皆さんがご来館になりました。めぐろキッズレポーターとは、目黒区在住のこどもたちが区内の情報を取材して、目黒区の魅力を発信していく活動です。今回はレポーター14名と大人スタッフ3名が取材のために当館を訪問しました。レポーターの皆さんは各自、展示室で標本や展示を見て回り、その後、私、巖城が6階の学習室で取材を受けました。こどもたちの大半が当館には初めての来館でしたが、取材では「一番危ない寄生虫は?」「寄生虫はみんな害がある?」などよく聞かれることだけでなく、「仕事のやりがいは何ですか?」など私が一瞬考え込んでしまうような質問もあり、いろいろな面から関心を持っていただき嬉しく思いました。取材の成果は2月以降に公開される予定なので、私たちも楽しみに待っています。【巖城】