2025年9月21日

髙野剛史研究員が日本ベントス学会奨励賞を受賞しました

 日本ベントス学会は、底生生物(=ベントス)を研究する研究者・学生が集う学会です。奨励賞は、ベントス研究において優れた業績(論文や学会発表など)をあげ、同学会活動に大きく貢献した若手研究者に贈られるもので、当館の髙野研究員が2025年奨励賞を受賞しました。彼の研究テーマである寄生性の巻貝類の自然史研究が高く評価されたことになりますが、それ以外にもアニサキス科線虫や深海魚の吸虫の分類など、多様な展開をしていること、博物館で活動していることなども今回の受賞に繋がったものと考えています。実は髙野研究員、日本貝類学会からも奨励賞を受賞されていますので、2度目の受賞となります(2023年6月28日のブログ)。
 髙野さん、おめでとうございます!【倉持】

2025年9月20日

令和7年度博物館実習が終了しました

 去る9月3〜7日、令和7年度博物館実習を実施しました。今年度は、青山学院大学、鹿児島大学、筑波大学、東京農業大学、日本大学、北海道大学、武蔵野美術大学、八洲学園大学からご参加いただきました。オリエンテーションのあと、資料のデジタル化と利活用に関する実習と、サイエンスコミュニケーション実習を行いました。デジタル化では、山口原図をスキャンして画像ファイルを作る作業、フォトグラメトリーによる3次元データの取得、資料の利活用については9月14日の巖城研究室長によるブログのとおりです。最後の2日間は「くま組」と「いぬ組」に分かれてのグループワーク。それぞれ巖城室長と髙野研究員に研究に関する取材をして、プレゼンテーションを作製。それぞれ相手のグループにプレゼンしてわかりやすさを競うゲームです。学部や専攻が異なる大学生が集まり、共通の課題に取り組んでいただきました。【倉持】

2025年9月14日

山口左仲博士の論文原図展示を更新しました

 9月10日から、2階展示室の「山口左仲博士が論文に使った原図」展示が新しくなりました。
 今回の展示は博物館実習(9月3日〜7日)の一環として、実習生さんたちが論文の図版の中から展示したいものを厳選してパネルにレイアウトし、設置したものです。2016〜2017年度にも展示した、魚類に寄生する吸虫類に関する論文(1934年)の百数十点の図版から選んでもらいました。結果として前回と同じ図版が約7割を占め、人々を惹きつける図版は共通しているのだなと驚かされました。
 中央のアクリルケースには、約85年前に山口博士が瀬戸内海産のハモの胃から採集した吸虫類 Tubulovesicula muraenesocis のプレパラート標本と、掲載された論文別刷のコピーを展示しました。ぜひ合わせてご覧ください。 【巖城】

2025年9月13日

久留米大学医学部より資料をご寄贈いただきました

 日本住血吸虫症はかつて、九州の筑後川流域、片山地方(現在の広島・岡山県境付近)、山梨県甲府盆地などに流行し、古くから人々に恐れられていた恐ろしく悲惨な風土病でした。久留米大学医学部の感染医学講座真核微生物学部門(旧寄生虫学講座)には、初代教授の岡部浩洋(こうよう)博士(在任:昭和24(1949)〜昭和49(1974)年)以来の、本症制圧に至る貴重な資料が数多く遺されていました。今回、現職の井上雅広教授のご尽力とご厚意により、これら資料を当館にご寄贈いただきました。去る8月28日に梱包作業、翌日久留米を出発、9月1日に当館に無事到着しました。この先、これら資料を保存しつつデジタル化を進め、公開して多くの方々に利用していただくことを目指します。
 なおこのプロジェクトは、(公財)関西・大阪二十一世紀協会による2025年度「万博記念基金助成金」をいただいて実現しました。【倉持】

2025年9月5日

山梨県のミヤイリガイ生息地を再訪


  今年の6月に山梨県でミヤイリガイ調査を実施した同じ生息地に、8月31日、長野保健医療大学の高本雅哉 教授、館長の倉持、私(高野)の3名で再訪しました。新宿から特急電車で約1時間半の旅です。来年2月、山梨県における日本住血吸虫症の終息宣言から30年をむかえることもあり、今年の日本寄生虫学会東日本支部大会では、関連する施設やフィールドをめぐるエクスカーションが企画されています。今回はその下見でした。
 当日は大変気温が高く無風で、さらに生息地では草が茂っていて、6月の調査時と比べとても探すのに苦労しました。それでも生息は確認できたので良かったです。【高野】

2025年8月29日

展示室の音環境をデザインしました

パネルの中に小型スピーカーを設置

 







アンプなど







解説文も設置しています













 当館は、「音楽を使った空間デザイン」を手がけるVegetable Recordと共同で、音を含めた展示室環境の作成を進めてきました。館内で流す音楽は、実際に展示室を見学の後、寄生虫やその生活史などから着想を得て作曲していただきました。8月26日にアンプやスピーカーなどの設置作業を行い、27日から流し始めました。
 1階と2階にある天井スピーカー、さらに各階3ないし4か所に設置された小型スピーカーから別々の音楽を流し、場所によって異なる雰囲気を感じられるようになっています。数々の標本や資料とともに、音楽もコンテンツの一つとして展示をお楽しみください。【高野】

本プロジェクトは、(一財)全国科学博物館振興財団による「2025年度全国科学博物館活動等助成事業」により実施されました。

寄生虫館HP: https://www.kiseichu.org/single-post/20250827
Vegetable Record: https://www.vegetablerecord.com/

2025年8月27日

白陵高校(兵庫県)の神尾祐輔先生と、京都大学・大阪大学の大学生2名が来館されました

 8月22日・23日に、白陵高校(兵庫県)の神尾祐輔先生と、京都大学医学部の井上愛菜さん、大阪大学理学部の西尾彩里さんの計3名が標本観察のために来館しました。2日間にわたって黙々と、当館が所蔵する単生類の標本の写真撮影と計測、スケッチなどをしました。神尾先生が先日、論文発表された単生類の標本も、当館への登録のためにお持ちくださいました。その後、展示室を観覧され、現在開催中の日本住血吸虫症に関する特別展と、生体展示されているミヤイリガイ(日本住血吸虫の中間宿主)も見ていただきました。【巖城】

2025年8月22日

こども霞が関見学デーに参加しました

 去る8月6〜7日、東京霞が関で開催された「こども霞が関見学デー」に参加しました。今年も文化庁からお誘いをいただき、3年連続の参加です。文化庁が掲げる「夏休み博物館体験!みんなの知らないディープな博物館を見せます!」のテーマのもと、当館をはじめ、すみだ北斎美術館、織物参考館"紫(ゆかり)"、国立ハンセン病資料館、東京動物園協会、JICA横浜 海外移住資料館が参加し、狭いながらも思い思いにブースを展開しました。今年はアニサキスがあまり採れなかったのですが、それでも巖城研究室長、佐田研究員、私(倉持)で、声をからして解説しました。【倉持】

2025年8月15日

国際軟体動物会議@サンパウロに参加


 8月3~8日にブラジルのサンパウロで開催された、国際軟体動物会議(World Congress of Malacology)に参加しました。片道30時間を超える長旅でしたが、日本からは9名が参加しました。会場はButantan Institute(写真1,2)で、敷地内にはたくさんの研究所や博物館が立ち並んでいます。ポスター会場が屋外(写真2)なのは初めての経験でした。私(高野)は、最近発見したクモヒトデ類に内部寄生するハナゴウナ科貝類についてポスター発表を行いました。また、ブラジルのハナゴウナ研究者とも初めてお目にかかり、今後の共同研究を含めいろいろお話しすることができました。
 ブラジルは、貝類が関わる寄生虫症の流行地でもあります。本会議でも、マンソン住血吸虫や広東住血線虫に関わる発表が複数ありました(写真3)。欧米開催の時はまず出てこない演題です。会場の脇には、住血吸虫の中間宿主となるヒラマキガイ類の展示もありました(写真4)。
 エクスカーションでは、ブラジルの自然に触れる機会もありました。ハキリアリの行列を見ることができ、大満足です(写真5)。写真6は、滞在したホテル近くの町の様子です。当然、日本とはだいぶ雰囲気が異なり、ぶらぶらするだけでも楽しいものです。【高野】

2025年8月9日

「教員のための博物館の日2025 in 目黒寄生虫館」を開催しました

 本研修は、去る7月28日の休館日に(独)国立科学博物館、(公財)日本博物館協会による共催、そして文部科学省の後援をいただき開催されました。学校の先生方にお集まりいただき、学校教育により博物館を活用していただくのがねらいです。当館は昨年に続いて2回目の開催です。小中学校、高等学校、支援学校、大学まで、首都圏だけでなく遠方からのご参加も含め、午前・午後合わせて24名の先生方にお集まりいただきました。館内ツアー(展示室と収蔵庫)のあとはマサバを用いたアニサキス検査の実習です。この研修が先生方の授業に生かされて、新しい展開に結びつけば幸いです。【倉持】

2025年7月21日

博物館・美術館等保存担当学芸員研修に参加しました

 去る7月7〜11日、私(倉持)は保存担当学芸員研修(上級コース)に参加しました。この研修は、東京文化財研究所(東京都台東区)の主催によるもので、公募により日本各地から集まった36名の学芸員が、最新の保存科学について講義と実習を受けました。保存科学とは、資料を傷めず長期保存するために、損壊(そんかい)の原因を極力除去するための自然科学。そのため研修の内容は、収蔵庫の温度・湿度管理から防犯・防災までどれもだいじな内容でした。中でも特に私が興味を持ったのは、レーザー光線、X線、赤外線などを駆使して、絵の具や接着剤の成分を分析する技術でした。【倉持】

2025年7月17日

対馬で貝類と寄生虫の調査(7/11~14)


 昨年に引き続き、長崎県対馬市で野外調査を行いました。養殖魚に病気をもたらす吸虫の中間宿主となる巻貝の採集が目的です。今回も十分な個体数が得られました。複数地点で調査を実施しましたが、対馬にはどこでもドアが設置してあるユニークな(?)干潟もあります。
 春から初夏にかけての調査シーズンも終盤。今年の前半はこれでひと段落です。【高野】

2025年7月6日

宇都宮市でカエル採集

 6/28に寄生虫調査用のカエル採集のために栃木県宇都宮市へ出かけました。実は5/31にも宇都宮市へ調査に出かけたのですが、大雨で気温が低く、カエルが1匹しか採れませんでした。そこで今回、再挑戦と相成りました。当日はとても暑く、気力十分とはいきませんでしたが、それでも森林に面した水田で、ヒガシニホンアマガエル、トウキョウダルマガエル、ニホンアカガエルを捕まえました。

 持ち帰ったカエルを解剖したところ、目的の種を含む、2種の線虫が得られました。今後も熱中症に気をつけながら採集を続けていきたいと思います。【佐田】



2025年7月2日

兵庫県立大学 環境人間研究科の明尾亮佑さんが来館されました

 6月25〜27日に兵庫県立大学 環境人間研究科・博士前期課程の明尾亮佑さんが,大野善右衛門博士の標本コレクション閲覧のため来館されました。
 故・大野博士は、哺乳類や鳥類の外部寄生虫類(ノミ、シラミ、ダニなど)について著名な業績のある研究者です。また、大野博士は1974年から当館に研究員として在籍され、当館にプレパラート標本約12,000点を寄贈されています。
 明尾さんは、コウモリのノミ類の標本を3日に渡って熱心に観察されました。日本では、ノミ類の分類学的研究は1960年代以降あまり進んでおらず、現在、ノミ類を専門とする研究者は大変少ないそうです。当館所蔵の標本が時を経て若い研究者に活用され、研究が綿々と引き継がれる様を見て、大変嬉しく思いました。 【巖城】

2025年6月28日

館山の磯で寄生貝調査


 6月25日、千葉県館山市の磯で寄生性巻貝の生態調査を実施しました。私は普段ウニやヒトデに寄生するハナゴウナ科の種を研究対象にしていますが、今回のターゲットはイソギンチャクに寄生するイトカケガイ科の巻貝です。これからも少しずつ、色々な分野に挑戦していきたいと思います。なお、黄色い帽子はお揃いで買ったわけではなく、磯調査の許可を得ている証です。【高野】

2025年6月27日

安城市でのカエル採集

  6月21日に寄生虫調査用のカエル採集のために、愛知県安城市へ行きました。当日は主に水田を調査しました。晴れで気温も高かったですが、風があり多少動きやすかったです。途中、ケリ(チドリの仲間)がけたたましく鳴きながら頭上を旋回し威嚇してきました。ケリに追いやられ場所を変えたりしましたが、ツチガエル、ヌマガエル、トノサマガエルを捕まえることができました。カエル以外ではスッポンと出会いました。スッポンは捕獲して写真だけ撮影し、すぐに逃がしました。

 持ち帰ったカエルを解剖したところ、目的の線虫1種の他に、吸虫2種、条虫1種が得られました。久しぶりに当たりの調査となりました。【佐田】

変態したてのカエル。5匹いる。

スッポン。けっこう素早い。

2025年6月18日

山梨県でミヤイリガイの調査


 ミヤイリガイは日本住血吸虫の中間宿主として知られ、寄生虫研究者の間で最も有名な巻貝かもしれません。6月14日、山梨県でミヤイリガイの採集をする機会をいただきました。日本住血吸虫の継代・感染実験を行っている研究グループが、実験室内で吸虫を発育させるため、定期的にミヤイリガイを採集しています。今回はそのサンプリングに同行しました。かつて山梨県では、「地方病」の原因として恐れられた日本住血吸虫ですが、今では終息宣言も出ており安全です。一方ミヤイリガイは、日本住血吸虫撲滅の過程で著しく数を減らしてしまいました。研究の推進と自然界での貝の維持。これらの両立が求められます。

 私は海の寄生性貝類を対象に研究をしているため、貝のサンプリングはよく実施しますが、生きたミヤイリガイを見たのは初めてです。寄生虫館で研究をしているからこその調査を経験できたと思います。余談ですが、カブトエビもたくさんいて驚きました。【高野】

2025年6月11日

国立研究開発法人 水産研究・教育機構(三重県)の新田理人博士が来館されました

 6月6日午前に水産研究・教育機構の新田理人博士が、当館が所蔵する魚類の粘液胞子虫の標本を観察するため来館されました。対象の標本はプレパラートでなく、エタノールまたはホルマリン液浸標本だったので、写真のようにスクリュー瓶からシスト(嚢胞)を取り出し、実体顕微鏡下でスライドグラス上に一部を載せて観察する手順が必要でした。また、所蔵している粘液胞子虫タイプ標本の有効性についていくつか指摘をいただいたので、今後、標本提供者とも協議して情報を整理します。この日は、新田さんが研究論文に使われた単生類標本も、当館登録のため受領しました。【巖城】

2025年6月1日

沖縄で貝類と寄生虫調査



 
 5月22日から30日にかけて、沖縄県の伊江村(伊江島)と恩納村で野外調査を行いました。海底洞窟と潮間帯にて、寄生性貝類や巻貝に寄生する吸虫類の調査でした。得られたサンプルは顕微鏡下で観察・ソーティング(仕分け)が行われます。ちょうど今論文を執筆中の内容の、追加標本を得ることができました。希少種で、そもそも2個体しか手元になかったので、今回のものも含めて原稿を仕上げる予定です。


  梅雨入りのタイミングとなり、雨の日もありました。そのおかげ(?)か、宿泊地の周りにたくさんカタツムリが見られ、それらに寄生するカタツムリダニも多数観察されました【高野】

2025年5月30日

2025年「国際博物館の日」記念事業のご報告

 去る5月18日は、2025年「国際博物館の日」。当館ではこれを記念して17日・18日の両日に「ミニ解説会」を開催しました。巖城研究室長、佐田研究員、私 倉持が交代でそれぞれが得意とする(好みの?)寄生虫談義を披露しました(解説の内容は5月11日公開の研究員ブログをご参照ください)。10分程度の解説会を6回開きました結果、合わせて204人の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。【倉持】

2025年5月21日

日本貝類学会大会&共同研究打合せ

 

 5月17~18日、日本貝類学会令和7年度大会が東京家政学院で開催されました(写真左)。私(高野)は「インド西太平洋におけるウニヤドリニナ属Vitreobalcis(ハナゴウナ科)の多様性」という題で口頭発表しました。また今年から評議員に選出されたため、前日16日には5時間にわたる会議に出席しました。
 学会後は京都大学の後藤龍太郎助教と、大学院生の山下正太郎さんが共同研究に関する打合せと作業で来館しました。山下さんは二日間にわたり滞在し、その間巻貝類の記載に必要な情報とデータ、論文用の写真の撮り方などをお教えし(写真右)、今後の方針を話し合いました。進展が楽しみです。【高野】

カエル採集行

 去る5月10日に寄生虫調査用のカエル標本採集のために、埼玉県小川町へ出かけました。当日は、水田や仙元山登山道沿いに流れる川を調査しました。しかし残念なことに、カエルはあまり活動しておらず、ヌマガエルが1匹とれただけでした。
 カエル採集には時期が早かったのかもしれません。なお、ヌマガエルは主に西日本や奄美・沖縄諸島に分布しており、関東へは近年侵入しました。
 持ち帰ったヌマカエルを解剖したところ、線虫が1種類得られました。欲しかった線虫なのでよかったです。今後も気長に調査を続けたいと思います。【佐田】

2025年5月11日

2025年「国際博物館の日」記念事業で「ミニ解説会」を開催します

 来たる5月18日(日)は、ICOM(国際博物館会議)が提唱する「国際博物館の日」です。世界中の博物館等で、この日を中心に様々なイベントが実施されています。

 当館では館長と研究員による「ミニ解説会」(各回10分程度)を1日3回、2日間にわたって行います。場所は1階展示室。予約・参加費はともに不要です。時間になりましたら直接お集まりください。
(話すテーマは両日ともに同じです)

各回のテーマと概要、担当者は以下の通りです。

5月17日(土)
11:00~ 「日本に何種いる?ロイコクロリジウム」    巖城 隆 研究室長:巻貝の触角の中でカラフルな模様の幼虫がピコピコ動くことで知られる寄生虫ロイコクロリジウム。実は、日本に何種も生息することがわかってきました。

13:00~ 「小笠原諸島で魚の寄生虫を調べる」        倉持 利明 館長:小笠原諸島父島周辺の魚に寄生する二生吸虫類を調べました。調査はまだまだ不十分で、その多様性は解明されていませんが、日本各地や海外からの記録と比べながら解説します。

15:00~ 「ヘビの寄生虫 シタムシについて」        佐田 直也 研究員:今年は巳年です。今年72周年を迎える当館も巳年です。そこでヘビに寄生するシタムシという生き物について解説します。

5月18日(日)
11:00~「小笠原諸島で魚の寄生虫を調べる」        倉持 利明 館長
13:00~「ヘビの寄生虫 シタムシについて」        佐田 直也 研究員
15:00~「日本に何種いる?ロイコクロリジウム」    巖城 隆 研究室長

なお、国内で行われる他の記念事業はこちらからご覧いただけます。
https://www.j-muse.or.jp/project/international-museum/
(公益財団法人日本博物館協会)

2025年5月10日

目黒マルシェ「初夏祭」に参加しました

 目黒マルシェは、目黒通りの大鳥神社交差点~清水交差点間の歩道で、年に2回開かれる地域活性プロジェクト。その13回目となる「初夏祭」が5月3〜4日に開かれました。両日とも晴天に恵まれマルシェは大盛況。当館も開館時間を午後6時まで延長し、「おしゃべり博物館」で参加しました。この企画は時間延長の1時間、私(倉持)ほか研究職員が展示室で来館者の皆さんからご質問をいただいたり、ご意見を伺ったり交流(おしゃべり)しようというものです。「人の役に立つ寄生虫はいないの?」というご質問を複数の方からいただいたのには驚きました。当館での研究ではありませんが、現在進行中の研究などをからめてお答えしました。【倉持】

2025年5月9日

周 洵(しゅうじゅん)博士がご来館になりました

 去る5月3日、台湾の国立中興大学獣医学系助理教授、周 洵博士がご来館になり、台湾の寄生虫事情、寄生虫学の研究事情などについてお話しいただきました。周先生は中興大学をご卒業のあと、当館とも親しい日本獣医生命科学大学の獣医寄生虫学研究室で学位(博士号)を取得され、母校に助理教授(日本の助教にあたる)として着任されたとのこと。エキゾチックアニマルの臨床や寄生虫研究に取り組んでいらっしゃいますが、生物多様性の宝庫台湾とあって、研究テーマには事欠かず日常的に人手不足だそうです。当館の研究員は興味津々で、今後の共同研究も視野に入れて活発に議論しました。【倉持】

2025年5月5日

佐世保で吸虫の中間宿主貝採集


 4月27日から29日にかけて、魚類の病気を引き起こす寄生虫の中間宿主となる巻貝を得るため、長崎県佐世保市へ調査に出かけました。当館のほか、近畿大、東大、京大、長崎県水産試験場の合同チームです。この魚病について、今年から科学研究費助成事業によるプロジェクトが始まりました。サンプルを得るのは研究の要になります。貝は無事に得られ、これから暫く飼育して、感染の有無を確認していきます。【高野】

2025年5月4日

千葉県木更津市でカエル採集

 

 4/26に寄生虫調査用のカエル標本採集のために、千葉県木更津市の小櫃川下流域に出かけました。小櫃川流域は、かつて日本住血吸虫症が流行していたことで知られます。現在では流行は終息しており、安全に調査活動ができます。

 当日は曇りで気温も低く、カエルもあまり活動していませんでした。それでも、ヒガシニホンアマガエルを2匹だけなんとか捕まえました。なお、アマガエルは最近の研究で、形態的及び遺伝的に東日本集団と西日本集団に分かれていることが判明し、東日本集団が「ヒガシニホンアマガエル」と名付けられました。 

 後日カエルを解剖しましたが、寄生虫は全くとれませんでした。今後も根気強く、調査を続けていきたいと思います【佐田】

小櫃川の様子


調査地の様子

2025年4月27日

目黒マルシェ「初夏祭!」に参加します!!

 目黒マルシェは、目黒通りの大鳥神社交差点~清水交差点間の歩道で開かれる地域活性プロジェクト。道路沿いにあるお店が軒先で露店や蚤の市を開きます。「大人がワクワクするような、おしゃれで楽しい場所を生み出したい」をコンセプトに、ピクニック気分でショッピングやグルメが満喫できるイベントです。
 そこで!!目黒寄生虫館は目黒マルシェの2日間(5月3〜4日)、開館時間を午後6時まで延長、さらに午後5〜6時には館長ほか研究職員が展示室で皆さんのご質問にお答えしたり、ご意見を伺ったり、「おしゃべり博物館」を開催します。もちろん入館無料、ミュージアムショップもオープンします。どうぞ目黒マルシェのお帰りにお立ち寄りください。【倉持】

第13回目黒マルシェ「初夏祭!」
日時:2025年 5月3〜4日 11時〜17時
   どちらかが雨の場合は5日に順延します*
場所:目黒通りの大鳥神社交差点より清水交差点までの各店舗前歩道
目黒マルシェ本部
t@meguromarche.com
TEL 03-3710-2990

*「おしゃべり博物館」は雨天でも開催します。順延はいたしません

2025年4月13日

情報コーナーで「日本の寄生虫症と寄生虫性食中毒の発生状況」展示を開始

 4月11日から情報コーナーで「日本の寄生虫症と寄生虫性食中毒の発生状況」の展示を始めました。
 日本では、かつて見られた回虫・鉤虫・蟯虫などによる寄生虫症はほとんど無くなった一方、新鮮な魚・肉や、汚染された水から感染する寄生虫症や食中毒、海外との交流の増加で感染機会が増えた寄生虫症が問題となり、死者も発生しています。
 新設の展示では、厚生労働省の統計データに基づく、最近10〜20年間の寄生虫症(四類・五類感染症)と寄生虫性食中毒の発生状況をグラフで見られます。今まで展示の無かった、クリプトスポリジウムやジアルジア(ランブル鞭毛虫)などの写真や解説もあります。
 特別展などの開催時は、一時的にそれらの内容に入れ替えることがあります。あらかじめご了承ください。【巖城】

2025年4月9日

久米清治博士を顕彰する楯をご寄贈いただきました

 故 久米清治博士(1915〜2008年)は、東京農工大学農学部獣医学科の教授を務められ、在任中の1948〜1978年に犬糸状虫の生活史を明らかにして、本症予防の道を開いた方です。去る4月2日、久米先生のご子息の久米邦興さんがご来館になり、1972年にアメリカ合衆国犬糸状虫学会から贈られた盾をご寄贈いただきました。今後、常設展示できるよう準備を進めます。このご寄贈は、中垣和英博士(私、倉持が農工大の学生だった時の先生)のご尽力により実現しました。【倉持】

2025年4月2日

日本寄生虫学会第94回大会に参加しました

 この大会は、大会長:大阪大学微生物病研究所の岩永史朗教授のもと、去る3月18、19日に大阪大学コンベンションホールで開催されました。当館から、髙野、佐田両研究員と私(倉持)が参加し、以下のタイトルで研究発表しました。

佐々木・巖城・倉持ほか:2023年および2024年に関東にて発見されたLeucochloridium属吸虫
髙野・倉持ほか:北西北太平洋の超深海性クサウオ科魚類から得られた吸虫の形態と系統的位置
倉持・髙野:皇居東御苑天神濠で捕獲されたナマズの胃から得られた自由生活性ヒル類、シマイシビルErpobdella japonicaについて

 ほかにもシンポジウムが2つ、評議員会・総会をはじめ各種委員会が開かれ、大会前日の3月17日には寄生虫分類形態談話会を主催し、さらに生態学・疫学談話会に出席するなど大忙しの3日間でした。【倉持】

2025年3月7日

北海道大学のサンアルン・カニアチップさんが来館されました

 3月5日に、北海道大学大学院獣医学研究科の大学院生 サンアルン・カニアチップさん(Ms. Kanyatip Sangarun)が研修の一環で来館されました。彼女はタイからの留学生で、現在の研究テーマは北海道のエキノコックスの分子疫学です。展示室では、家畜の寄生虫やエキノコックス(多包条虫・単包条虫)の展示だけでなく、多包条虫の中間宿主のエゾヤチネズミから採集された猫条虫の一種(ヒダティゲラ・カミヤイ)にも注目していました。また、現在開催中の「世界顧みられない熱帯病の日 特別写真展」も熱心に見入っていました。
 なお、いつもは彼女はプロイ(Ploy、意味は宝石)さんと呼ばれていますが、タイでは本名は長過ぎて覚えられないため、家族や友人の間ではニックネームで呼ぶ習慣があるのだそうです。【巖城】

2025年3月6日

日本展示学会:2024年度展示学講座に参加しました

 この講座は去る2月22・23日、日本各地で展示に携わる職員など40名ほどを集めて、東京国立博物館の黒田記念館(東京都台東区)で開催されました。今回のテーマは「展示のリノベーションを考える」でした。このリノベーションという言葉には、展示のリニューアル(改修)とどまることなく、社会的な要求の変化や、来館される皆様のニーズの拡大と多様化に広く応えるために博物館は生まれ変わる、という意図が込められています。2日間のプログラムは、リノベーションの現在とこれから、リノベーションに向けた展示評価の方法に関する講義、ワークショップ(写真参照)、リノベーションの事例報告などからなりました。多様で高度なデジタル化によりリノベーションを達成した報告の一方で、解説パネルを「手書き」にしたことで来館者が急に増えた事例などは大きな話題となりました。【倉持】